白リブソックスの編み目を、俺は一目で見分けられる。
たとえ人混みの中でも、遠くのホーム越しでも。
それが“俺の好きなやつ”かどうかなんて、
ほんの一瞬、足元を見ればわかる。
その日、駅前のロータリー。
時間調整でベンチに座っていたときだった。
買ったばかりのアイスコーヒーを片手に、ぼんやり人の流れを眺めていた。
ふと視界に入った、一本の足。
ヒールでもなく、パンプスでもなく、地味な黒のスニーカー。
けれど、そこからチラリと覗く白――
分厚いリブ織りの白ソックスが、俺の意識を一瞬で掴んだ。
しかも、それはただの白じゃない。
くっきりとした縦リブ。足首でくしゅっとたるんだ形。
何度も洗濯されて、少しだけ生地が毛羽立っている。
日常使いされてる白リブ。これが、一番エロい。
思わず顔を上げると、そこにいたのは――
「……晶子?」
足元ばかりを見ていたせいで、顔を確認するのが遅れた。
だけど、見た瞬間にわかった。
8年ぶり?いや、もう少し経ってるかもしれない。
最後に会ったのは、たしか彼女が就職した直後だった。

「……え? 高ちゃん?」
驚いたように目を丸くした彼女が、ゆっくり笑った。

「うそ……ひさしぶり……!」
声も、目元のシワの寄り方も、なにもかもが懐かしいのに
一番変わってなかったのは――やっぱり、あの白リブソックスだった。
「ちょっとだけ時間あるなら、お茶でもどう?」
そう言ったのは俺だけど、
本当はただもう一度、あのソックスを正面から眺めたかっただけかもしれない。
カフェに入り、向かい合って座る。
テーブルの下、スカートのすそから覗く白い足元を、俺は隠すように盗み見る。
人妻になっても、変わらない白ソックス。
でも、それが逆に俺をゾクゾクさせた。
“誰かのもの”になった足元。
脱がされず、夫の前でも履いているであろうリブソックス。
そのまま……俺の視界の中にある。
晶子は今、人妻。子持ち。
でも、俺はバツイチ。金もある。時間もある。
そして――あの白ソックスに欲情してしまう最低なフェチ持ちの男だ。
だけどこの瞬間だけは、思ってもいいだろ。
ああ、やっぱり晶子の足が――いちばん、いい。
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